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アルフレッド・コルトーは、ルービンシュタインとともに20世紀前半、ショパン弾きの第一人者と呼ばれたピアニストです。昭和初期、我が国でレコード鑑賞、名曲喫茶といった名曲鑑賞の文化が一般大衆化し、それとともに、我が国の一般庶民に異国のショパンのピアノ曲が浸透し始めたようです。その当時のSPレコードで常にベストセラーを記録し続けたのが、アルフレッド・コルトーの弾くショパンだったようです。 当時のショパン音楽愛好家の不運な点は、コルトーと張り合えるピアニストがいなかったことでしょう。レコード売上数も期待できない黎明期に、店頭に並ぶショパンのレコードはコルトーのものばかりだったようです。現在の年配の愛好家の方々が、ショパン弾きといって真っ先に彼の名を挙分かるでしょう。ショパンの抒情詩と歌を自由闊達なテンポ・ルバートと語り口の上手さで極めておおらかに歌い上げていくのです。春のそよ風に吹かれた爽やかげるのはこうした背景があったからなのです。世界的コンクールも誕生していないこの時代は、競争相手のいない実に平穏でのどかな時代でもあったようです。 それが理由かどうかは分かりませんが、コルトーの弾くピアノはいわゆる「ピアノの名手」のものでは決してなかったようです。現在、厳しいコンクールで他者を退けて勝ちあがってきたピアニストのサイボーグ並の強靭なテクニックと比較してしまうのは酷のような気がしますが、技術的なものだけに限って言えば、彼のピアノ演奏はプロフェッショナルとはとても言えないようです。 それでもなお、現在に至ってもコルトーの名前が忘れられずに語り継がれているか、といえば、そのボロボロなまでの演奏技巧、ミスタッチの嵐を補って余りあるほどの音楽的魅力に満ちた演奏を聴かせてくれるからです。「音楽は技術より心が大切だ」という言葉は完璧な技術を身につけた人間が言うべき言葉であって、技巧が不完全な人がこの言葉を盾にとると、単なる負け惜しみの弁となるでしょうが、同じ言葉をコルトーが言ったとしたら……妙に説得力がありますね。彼はショパンの作品を聴かせるために必要最低限の技巧しか持ち合わせていませんでしたし、ミスタッチの名人でもありましたが、それを大目に見る(聴く?)寛大な心がある人ならば、この人のショパンの素晴らしさがなショパンといった印象です。僕を含め若い世代の聞き手には若干古いと感じさせるのは仕方ありませんが、一度は聴いておいて損はないでしょう。個人的にはあまり好きではありませんが……
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